伊藤県議が知事と初論戦/憲法問題への認識・政治姿勢などただす

活動報告

 日本共産党の伊藤祐司県議は9月25日、本会議で一般質問に立ち、山本一太新知事の政治姿勢や、東邦亜鉛の有害スラグ問題に対する県の対応について質しました。山本知事就任後、初めての論戦となりました。
 参議院議員時代に「アベ親衛隊」を自任し、「9条に自衛隊を書き込む」ことを主張するなど改憲をあおる発言を繰り返してきた山本知事。伊藤氏は、憲法99に規定された「憲法尊重擁護の義務」への認識を問うとともに、「今後も改憲への言動を取り続けるつもりなのか」と質しました。
 山本知事は、「憲法尊重擁護の義務は当然」との認識を示した一方で、改憲発言について、「政治家としての個人の信念を発言することがあったとしても、問題ないと考えている」と答弁しました。
 伊藤氏は、「県職員は採用時に憲法順守を誓約する。採用する側の知事が憲法をないがしろにする発言を繰り返すことは、天に唾するものだ」と指摘。知事個人のブログであっても、広く県民がその主張を知るメディアでの発信は決して許されるものではないと強調しました。
  伊藤氏は、憲法が定める「地方自治」の意義・目的への知事認識についても質問。安倍政権のもとで、陸上自衛隊相馬原駐屯地を拠点とした米軍・自衛隊のオスプレイ訓練や、過酷事故が起きれば群馬への大きな影響も免れない柏崎刈羽原発の再稼働など、多くの県民が心配していることを政府が強行した場合、知事として抗う覚悟はあるかと聞いたのに対し、山本知事は、「仮定の話には答えられない」と答弁を避けました。

国保税/構造的な問題認識するも、県独自の対策とらず

 山本知事は、県政運営にあたり、「県民の幸福度の向上」に全力を注ぐとしています。伊藤氏はこれに関して、学校給食費の無料化や全学年での30人以下学級実現など、具体的な県民要求を示して実現を迫りました。この中で、高すぎる国民健康保険税についても取り上げました。
 2018年度の国保税滞納者は加入世帯の14.8%で、前年度(14.1%)から増加しています。18年度は国保の都道府県化によって運営が県に移管され、税額の急激な変動を防ぐための激変緩和措置によって、市町村の納付金額は据え置かれています。しかし、今年度の納付金は県平均で4.3%上昇。伊藤氏は、「18年度でさえ滞納者が増えていることを見れば、納付金が増やされた今年度はさらに滞納者が増えるのではないか」と指摘。国保税の値上げを抑えたり、税額を引下げるために市町村が行っている一般会計からの繰り入れといった努力に対し、国に言われるがままペナルティを課すようなやり方をやめるよう求めました。
 その上で、「根本には国保制度の構造的な問題があるとしても、全国知事会とともに引き続き国への公費投入を求めるとともに、緊急避難措置として県が一般会計からの法定外繰り入れを行い、少なくとも値上げだけは避ける措置をとるべきだ」と主張しました。
 山本知事は、「構造的な問題を抱えていることは認識している」と述べつつも、「まずは国がしっかり検討するものだ」として、県としての措置を取る考えはないと答えました。

有害スラグ/早急な廃棄物認定と全量撤去の措置命令を

 高崎市箕郷町のメガソーラー施設の土台や民家の庭などに、環境基準を大幅に超えた鉛やヒ素などを含む大量の有害スラグが使われている問題で、伊藤氏は、健康や環境への被害拡大を防ぐための早急な対応を改めて求めました。
 党と市民団体の調査・追及によって、東邦亜鉛は8月、当該スラグが安中精錬所から排出されたものと認めて謝罪しました。しかしいまだにスラグを「製品」と呼び、同社負担による回収・撤去についても「生活環境上の支障を除去する措置が必要な場合」と条件を付けています。
 伊藤氏は、かつて安中公害を引き起こした企業とその下請け業者が、有害な産業廃棄物を「リサイクル製品」と偽り販売してきた悪質な事件だと指摘。県として廃棄物処理法違反の事件として刑事告発し、同法にもとづいて措置命令を下して、ただちに全量撤去させるよう迫りました。
 県環境局は、「全容を調査中」「これまでの調査では、土壌汚染は確認されていない」などと、これまで通りの答弁を繰り返すばかり。伊藤氏は、有害物質を大量に含んだスラグは「土壌」ではなく、遮断型最終処分場で処理しなければならない最も汚染された「産業廃棄物」であり、本来であれば、廃棄物処理法を適用して一刻も早く全量撤去しなければならないものだと強調し、「東邦亜鉛も自分たちが排出したと認めている。まさに産業廃棄物だ」と指摘。問題を土壌汚染対策法にもとづく土壌や地下水汚染の有無にすり替えて、本質をはぐらかし続ける県当局を厳しく批判しました。
 環境局長は、「スラグは土壌ではないが、土壌汚染対策法の技術的基準は参考にできる」と強弁。山本知事は、「きわめて遺憾、深刻に受け止めている。県民の健康を第一に考えて対応している。一日も早く全容を解明し、必要な対策をとっていく」と答えました。

動画スタジオに1億円超/政府の広報機関にするな

 山本知事は、今度の定例会に提案した補正予算案の「最大の目玉」として、山本知事が推進する情報発信の一貫として、県庁32階展望ホールへの動画スタジオ整備費(1億1,684円)を盛り込みました。知事はこの間、閣僚などを招いた発信もしていく考えを示しています。
 伊藤氏は、「まるで政府の広報機関だと受け止める県民もいる」と指摘したのに対し、山本知事は、「群馬県のPRをするもの。政府の広報という指摘は当たらない」と答弁。伊藤氏は、「自民党参議院議員だった知事が閣僚を呼んで対談すれば、一面的や議論やとらえ方で方向が定まっていくという危惧もある。悪政を県民に押し付ける放送局にはしないでいただきたい」と迫るとともに、「今、スマホだけで撮影した映画が素晴らしい出来だと評判になる時代。動画の録画や編集は県職員がやるというが、異動のある職員に高度な技術が蓄積できるか疑問だ。群馬をPRする良いものをつくろうと思えば、専門業者をつかって観光地などロケを中心にすべき。これは総じて知事の趣味の域を出ない」と指摘しました。
 さらに、ツイッターなどSNSで知事の動向を情報発信する「G-SNS」について、「バスケのイベントでフリースローのパフォーマンスを発信するのまで見せられると、個人での発信となんら変わらない。県民の税金と9人もの県職員でやるのが果たしてよいことなのか。発信内容の吟味をすべきだ」と求めました。